2. 階上地区まちづくり大綱

 

本章では、階上地区が今後目指していく街のあるべき姿について、「基盤整備・防災」「健康・福祉・環境」「教育」「産業」の各分野について記載している。気仙沼市域のなかで、あるいは、より広域な地域社会のなかで、階上地区が果たす役割とはなにか、という点について、その歴史的背景や環境、産業構成等を考慮した上で、他地区とも議論を重ね、協働していくことが求められる。行政主体の都市計画(「なにをしてもらうか」)から、住民主体のまちづくり(「なにができるのか」)へ、その主役が移り変わるなかで、階上地区における住民主体のまちづくりであり、ひいては本来目指すべく自助・共助の精神によるコミュニティが確立された地域への道しるべとなるものである。

 

2-1. 基盤整備・防災 −災害に強い街−

復興に向けたまちづくりの取り組みとして、最優先に考慮すべきは、「災害に強い街」をつくることに他ならない。そのためには、官民一体となって、ハードとソフトの両面から地域総合防災計画をつくっていくことが肝要となる。また、市内で特に浸水被害の大きかった地区であることを勘案し、二度と悲劇を繰り返さないよう、被災された多くの方々に思いを馳せた、防災への取り組みを、広く伝達していく役割を担う必要がある。

一方、防災集団移転・災害公営住宅の整備による居住エリアの新設、気仙沼向洋高校の移転新設(平成30年予定)によって、地域内の動線が大きく変化することが想定されるため、その対応策を早い段階から協議していく必要がある。

 

2-2. 健康・福祉・環境 −多世代・自然共生の街−

少子高齢化社会において、高齢者世代の健康の増進、福祉の充実、子育て支援の充実、子供を健やかに育成するため地域での見守り体制構築は、一体となって取り組むべき課題と考える。階上地区は、家族経営を軸に農業・漁業を営んできた経緯から、多世代型の家族構成となっており、その長所を活かした豊かなコミュニティを築き上げていくことが求められる。地域にとっての一番の資源は、そこに住む人々であり、子どもからお年寄りまで、また、障がい者等の社会的弱者も含めて、みなが元気に楽しく暮らせる街をつくることこそが、まちづくりの目標となる。

また、階上地区は、海から山まで豊かな自然を擁しており、それらを活かした健康増進にも力を入れ、気仙沼市内における健康増進モデル地区を目指していく。

 

2-3. 教育 地域一貫教育の街−

気仙沼向洋高校の移転新設により、階上地区は市内でも有数の教育関連施設の密集地帯となる。この地域で育つ子どもたちは、学校教育のほかに、地域の大人との交流を含めて地域の文化や歴史を知る場があり、加えて、田畑での農業体験、海岸や海での漁業体験などの野外活動を通じて、郷土愛を深めてゆけるような、地域一貫教育の体制づくりが望まれる。

また、震災の記録と記憶を残し、後世へ語り継いでいく場を設け、その経験や防災に関する知見を次なる世代や他の地域に対して教育・伝承していく役割を果たすことも重要である。

 

2-4. 産業 自然の恵みを享受する街−

豊かな自然の恵みを享受し、より持続的に発展していくためには、基幹産業を担う農業・漁業の再生が不可欠である。震災以後、その復旧が図られているが、震災以前より深刻化していた後継者不足の問題を打開するためには、六次産業化を推し進め、競争力の向上と収入の安定化を図ることで、地域内での経済循環をつくりだし、地域内外の若年層やサラリーマン定年層の就農・就漁を促していく必要がある。

また、階上地区は、従前より、岩井崎やお伊勢浜海水浴場といった市内有数の観光資源を有しており、それらの再生を図るとともに、震災の伝承、防災教育を含めた観光プランを立案していくことが急務である。